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 ボリヴィア紀行

フォルクローレ(民族音楽)

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 フォルクローレと聞いて何を思い浮かべますか? もともとは、スペイン語で“伝承”“民謡”などを意味する言葉でしたが、“コンドルは飛んでゆく”“花祭り”などに代表されるアンデス山脈地方の音楽が数十年前に大ブームとなり、それ以降日本では“フォルクローレ=アンデス地方の音楽”と解釈されるようになったようです。

 ここボリヴィアはそのフォルクローレの本場。特にアルティプラーノ(アンデスの高原地帯)に位置するラ・パス市では、ありとあらゆる民族音楽に触れることができます。
  市内のあちらこちらに“ペーニャ”呼ばれる飲食パブ(ライブハウス)があり、週末はどこもかしこも人で溢れています。こちらでは演奏開始時間が遅く、大抵は夜10時ごろから始まり、夜中の2時ごろまで演奏が行われ、時には終了が朝の5時ごろになることもあるそうです。一昔前は、地元の人びとの憩いの場として親しまれ、有名な人気グループや新人の演奏家たちも出演したりして、家族ぐるみで演奏を聴きに行ったり、その場で踊ったりする光景も見られたそうですが、現在では、そのほとんどが外国人観光客向けのショーとなってしまい、地元の人たちの足は遠ざかってしまいました。

  その理由として、入場料金が観光客向けに高く設定され(チャージ・飲み物付きで10ドル前後、その他の飲食物も高額)、その上有名なフォルクローレ演奏家たちが外国(主にヨーロッパなどで)での活動を主とし、地元の“ペーニャ”では若手の新人グループの出演のみとなってしまったことがあげられます。ただ、市立劇場(Teatro Municipal)やコンサート会場などで行なわれる様々なジャンルの音楽演奏には、多くの地元の人たちが集まります。私の職場(教育TV局)にもTV番組に出演するために、ほとんど毎日のように地元ボリヴィアや隣国のペルーで活躍しているフォルクローレ演奏家たちが訪れ、生放送番組の中で演奏を行なっています。職場が、まるで“ペーニャ”のようになることもしばしばです。

 さて、その“フォルクローレ”ですが、いったいどのような楽器が使われ、またどのようなリズムが奏でられるのでしょうか?

 先住民(アイマラ族)の時代やインカ時代では、収穫を願い・祝う祭りや祭祀などを行なう時に、楽器は欠かせないものでした。山羊や鹿・アルパカなどの動物の毛皮を張った太鼓類、カーニャと呼ばれる篠竹に似た植物で作られた管楽器類(ケーナやシクーなど)が使われていました。中には、コンドルや他の動物の骨を材料にして作ったケーナもありました(人骨を使ったものもあると聞きました)。その後、スペイン人征服者たちが持ち込んだバイオリン・リュート(ギターの元祖)・ハープなどの弦楽器やピアノなどの楽器が加わり、激しく揺れ動いた歴史の経過と共に様々な“かたち”に変わり、今では数え切れないぐらいの種類になりました。

 リズムも多様で、各地にそれぞれの特有なリズムや伝承メロディ(Tonada)が存在しています。インカ時代から伝承されてきた舞曲“ワイニョ(Huayno:2拍子系)”とスペイン人たちが持ち込んだ“ヤラビ(Yaravi:3拍子系)”に代表されるリズムの他に加え、スペイン人によって西アフリカから奴隷として連れてこられた黒人たちのリズムでペルー海岸地方から伝播したサンバ系リズムの“クエカ(Cueca)”、ボリヴィアが起源となる舞曲“バイレシート(Bailecito)”などなど、多くのリズムがあります。このように、フォルクローレには様々なバリエーションがあり、広い国土を持つボリヴィアではその地域ごとに文化や風習・気候、さらには民族のルーツまでが異なる、という特殊な事情があることを、民俗音楽について深く知れば知るほど、あらためて認識させられます。

 私も時々、市内にある“ペーニャ”や“コンサート会場”などへフォルクローレを聞きに行きます。いつも感じるのですが、その演奏は私たち日本人が“フォルクローレ”に関して持っている“素朴な民俗音楽”というイメージとは少し異なります。最近のコンサートでは、エレキギターやキーボード・パーカッションなどの電気楽器が使われていたり、生楽器の音もオーデイオアンプで拡声されてものすごい大音量になり、メロディが聞き取れず、まるで騒音のようになることもしばしばです。もちろん、ケーナ・シクー・ギター・チャランゴ・太鼓などの純粋な生楽器のみで演奏するグループもいます。

 代々、その子孫へと受け継がれてきたアンデス山脈地方の民俗音楽“フォルクローレ”。時は巡り、“近代化”“商業化”という波に飲み込まれ、またその形を変えつつあります。小さな田舎の祭りやアンデスの高原地帯の羊飼いたちが奏でる“素朴な旋律”―こんなイメージを“フォルクローレ”に求めるのは、私たち外国人の勝手な幻想なのかも知れません。

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